8の字ウォークのハト 「ハチノジ」

960 574 Yuramaki

例によって、私の最寄り駅に
いつもたむろしているハトの群れ。

見ていると、思い出すことがあります。
それは、小説家のモーパッサンが昔
先輩から、教わった言葉。

「きみ、パリの街頭に出かけていきたまえ。
タクシー運転手を1人捕まえるんだ。
ほかの運転手と、どこも変わったところがないように君には見えるだろう。
しかし、君の描写によって、この男が世界中のどの運転手とも違った一人の独自の人物に見えるようになるまで、きみは、この男を研究しなければならない」

春先、最寄り駅にたむろする、
ハトたちを見ながら甘栗を食べていた。

少しおすそ分けをすると、
同じハトにも性格があることに気づく。

7割のハトは、
降ってきた食べ物へ、
バーゲンセール会場のごとく
一直線に向かう。

押しが強い個体、
弾き出されるものもいて、
人間とあまり変わらないなと思う。

残るうちの1割は、
甘栗を持つ私の
手をめがけて飛びのってくる。

食べ物の元栓を狙う、
知恵と勇気のタイプがこちら。

今まで見た限り
足を怪我しているものにやや多い。
ほかのハトが及び腰な事に
チャレンジして、何かしら
痛手を負ったと私は見ている。

別の1割は、
食べ物をとりにいく他のハトを、
執拗に突き回っているジャイアン。

きみは、食べなくていいのか。

何回食べ物を与えても、取らずに
がっついている他のハトをつつく。

怒ってガーガー言うのが先になって、
目的を見失った人を、ふと思い起こす。

最後に残った1割。

その中の1羽が、今日の主役だ。

あえて、放られた食べ物を無視して
人の足元に向かってくるハトがいる。
がたいの良い、オス。

それは、人が
結構な確率で食べ物を取りこぼすと
知っているらしい。

よく見ていると、腰かけている
私の足元、両足の間を
八の字に歩いていく。

時々私の足の甲を踏んづけていく。
足取りは軽い。体重も軽い。

小さな隙間をパトロールだ。
どんなちびた取りこぼし、
スナックのかけらも見逃さない。

何も落ちていなければ、
私の靴紐を引っ張る、催促付き。

下駄の時は引っ張れるものがないので
足をつっ突いてくる。

それなりに痛い。
振り子のように首を振っている、
あの勢いと筋肉で、意外と力強い。

名付けて、「ハチノジ」。
小さな動きで最大の効果を狙う。
実は切れ者なんじゃないか?
と、私は睨んでいます。

後日談1
ある日、ハチノジが八の字
ウォーキングをしたとき、
真似するほかのハトがいました。
もしかして、息子?
だったら、家業のようで、面白いなぁ。

後日談2
このハト観察を3、4ヶ月したあとにスケッチをしたら、だいぶ自分の物の見え方が変わった。楽にできるようになりました。
同じ5分見るのでも、深さや細かさ、画像で言ったら解像度が違うという感じかな。
7年ほど前は、目の前のモチーフを見ているとどこを見て良いか分からず、すぐ飽きてしまった。
それが、眺めれば眺めるだけ、グーッといろんな箇所の造作が、頭のスポンジに吸い込まれるように迫ってくるようになった。段違いになって驚いた。

過去のハトエッセイシリーズ
第1弾 鳩とわたし
第2弾 見かけるたびシャンプーしたくなるハト「むなげ」
第3弾 水墨画のようなハト「グレースケール」

 

HANDS
 デザイナー  由良万紀子
 JUMA. Creative -global design team-
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