いいものを
長く使うのは美しい
趣味が高じて金継ぎのページを作りました。
金継ぎとは、壊れてしまった陶器やガラスを、漆の力を使って修復する、日本の伝統技法です。漆は、乾くとゴムのようにしなやかな天然接着剤。金継ぎの技法は、710年の奈良時代から行われていると言われています。
ときに無傷のものを超えた味わいを作り出す感性は、日本人の美的センスならでは。
傷を活かす。その身に何か受けるほどしなやかに強く美しくなる。金継ぎそのものが、まるで成長する人間のメタファーです。
金継ぎに感動し趣味が高じて、たまたま先輩から修繕の依頼も来たことから、こんなページを作ってしまいました。
壊れることが、怖くなくなる。
傷を直すことで、自分も癒やされる。
価値観の変わる修繕を、あなたも体験しませんか。
金継ぎの歴史
漆継ぎの歴史は、私たちの国で、古く紀元前1001年、縄文土器の修繕にその痕跡が見て取れます。割れに金/銀粉を施し始めたのは、1500年代。茶の湯が千利休により広まった頃。
茶道具の銘品が割れた時、買い換えが効かず、漆職人によって繕われたのが始まりと言われています。
修繕事例

砥部焼のどんぶり
大きなヒビでしたが、直した後は水漏れも全くありません。

螺鈿(貝)のネックレス
器以外に、割れてしまったアクセサリーも金継ぎできます。(photo by 森井ユカさま)

ファイヤーキングマグカップ
ビンテージでヒビが入りやすい食器も、修繕で長く使えます。

ご飯茶碗
脚が欠けてぐらついたところを金継ぎ。一寸見えるのが愛らしい。
修繕の手順

1. 繕い箇所を確認
割れている場合は、テープで仮止めして、全体像を確認していきます。この時に、接着面の掃除、ヤスリがけをして面を整えます。

2. 接着
食品衛生法に合った安全な接着剤、または麦漆でつなぎます。漆を使う場合は、この乾燥で2日ほど待ちます。

3. 目地埋め
ヒビや欠けを、パテまたは錆漆で埋めます。固まってから、サンドペーパーで水研ぎ。補修した箇所をなめらかに整えます。

4. 仕上げ
ヒビや欠けていた箇所に漆をひいた後、金粉を撒きます。金粉は、リーズナブルな真鍮から、アルミ、金、銀まで様々な素材があり、目的に応じて選びます。
2・3日ほど乾かせば、完成です。
ご感想
とても気に入って15年以上よく付けていた貝(ボタンに使うアレ)のネックレス、家の中で落っこ としたら1コ割れてしまったので、金継ぎしているという桑沢の後輩にお願いしてみたら、予想以上に素晴らしいできあがりでした、ありがとう!
割れた当初は接着剤しかないかと諦めていたけど、たまたまTwitterで6次元のナカムラクニオさんが大きな貝を金継ぎしているのを見て、それならコレもイケるだろうと思ったのでした。金のラインがすごくいい感じでマッチしています、これでまた落としても大丈夫。
– 森井ユカ さま
金継ぎの素材について
私は、基本的に、直接口に触れるか触れないかで素材の使い分けをしています。
直接口に触れるかどうか
あ. 口に触れない(アクセサリ、コップの取手など)
基本的には、新うるしを使った金繕いでお直しをします。新うるしはカシューナッツの殻の油を基にした、漆の性質を模した植物性樹脂塗料です。魚釣のルアー作りによく使われます。かぶれの元となるウルシオールが入っておらず、かぶれにくく乾きが早いのが特徴。
金継ぎしたコップは観賞用にすると決めていたり、口に触れないアクセサリの修理、などはこちらが向いています。
い. 口に触れる(コップの縁など)
本うるしを使った金繕いでお直しをします。昔ながらの漆で、乾いてからは口をつけても安全です。乾くのにやや時間がかかります。
仕上げの色
色は主に、金、銀、黒を使います。素材は、金粉、銀粉、真鍮粉、錫粉、など。器やお直し品に合わせて色を組み合わせます。
詳しくはこちらのコラムをお読み下さい
→ 本漆/新うるしと金属粉4種類の違いについて
金継ぎ費用
修復箇所のサイズと難しさによって変わります。
0〜3cm (ヒビ/割れ/欠け)
1点5,000円から
*割れ方が複雑だと、上の見積もり以上に手間のかかる場合があります。割れ方が簡単で、簡易金継ぎならお安くできる場合もあります。
*素材は、陶器・貝などなら金継ぎできます。ガラス質のものは接着剤の食いつきが悪く、私にはまだ勘所が掴めません。似た素材の瑪瑙はくっついたので接着できるようです(素材の吸い込みが悪いので時間が2ヶ月近くかかります)。
ガラスは、ガラス金継ぎの経験が多いプロの方に頼むことをお勧めします。
*まずお問い合わせの上、メールと写真でご相談を。
金継ぎ日数
その時の私のスケジュールにもよりますが、大方これくらいの日数でお渡しが可能です。
簡易金継ぎ … 約2週間
本漆継ぎ … 約1.5ヶ月
金継ぎ品のご注意
・金継ぎをした器は、電子レンジの使用を避ける。金/銀粉から放電して、電子レンジの加熱機構にダメージを与えます。
・金継ぎ部分を長時間水につけない。塗った部分がふやけてボロボロに剥がれやすくなります。
・固いものにぶつけたり、こすらない。金継ぎ部分が剥がれる恐れがあります。
私の先生のご紹介
6次元 ナカムラクニオ氏 (https://twitter.com/6jigen)
著書 『金継ぎ手帖』『古美術手帖』『チャートで読み解く美術史入門』『魔法の文章講座』『世界の本屋さんめぐり』など。 アメリカでKintsugi academyを開催。