金継ぎ

Kintsugi

金継ぎに使う、本漆/新うるしと金属粉4種類の違いについて

ここでは、金継ぎに使う素材が違うと実際にどんな違いが出たのか、私の体験談をお伝えします。

まず、金継ぎには、接着剤と蒔絵に使う金属粉に幾らか種類があります。

例えば
接着剤では、本漆と新うるし(合成うるし)
金属粉では、金粉、銀粉、真鍮粉、錫粉

それぞれがどう違うのか、気になりますよね。調べてもまとめているウェブサイトは、少なかったりします。そこで、私の体験談をご参考にご紹介いたします。

味噌汁のお椀を、素材違いで金継ぎした例

① 新うるし(合成うるし)+ 真鍮粉

さすが新うるしは1日で乾きますし、真鍮粉は安価で手軽です。修繕すれば翌日には食器がすぐ使えるようになるのはとてもありがたいものです。

ただ、6ヶ月くらいで真鍮粉が緑色っぽくサビてしまったんです。。何度も洗ううち、少し新うるしも剥げてしまったように感じました。水には弱かったですね。お写真ないのが申し訳ないんですが。

例えば、

ウェブサイトに載せていた、新うるし+真鍮粉で、お直しした貝のネックレス。
あれは、直して1年以上経ちますが、依頼主さまからそういった変化を伺っていません。
この組み合わせは、水や洗剤などに触れさせなければ十分に持つものだと思います。

メリット:
初心者に優しい。素材としてとても扱いやすい。素材が安い、乾燥が早い、ほとんどかぶれない、ムロに入れなくていいので手がかからない

デメリット:
水や酸性のものによく触れる、しょっちゅう洗って擦られる品には向かない

安全性:
口に入れないものなら十分(というのも、新うるしについては、もともと釣具DIYのために作られたもの。口に入れる事はどのメーカーも推奨はしていない。また真鍮は、銅と鉛の合金で錆びやすく、緑青という青錆が出る。毒性はほとんどない)。

② 本うるし + 金粉

あの、かぶれることで有名な漆+金粉。710年の奈良時代から鉄板で使われているゴールデンコンビです。
この伝統的な素材で繕ってみたところ、1年以上水洗いしても酸辣湯を入れても全然錆びません。

安定してる金属だけあって、耐久性はピカイチです。
個人的な体感ですが、接着剤も、本漆の方がやや強いのではないかと思います。

写真は、この組み合わせで繕って1年以上経ったお椀です。ギラギラではなくやや抑えた上品な艶に仕上がり、繕った当初とほぼ同じ輝きを保っています。

メリット:
錆びないし丈夫(ただし漆の性質上、長く水につけてはダメ。銀は時々錆び取り必要)。室町時代の金継ぎ・蒔絵ものが現代に残っているくらい長持ちする。

デメリット:
中級者〜玄人向け。素材が高価、乾燥に1週間〜1ヶ月かかる、肌に付くとかぶれる、湿度のある場所で硬化させなければならない。

安全性:
食器にバッチリ使えるくらい安全。

どちらも、一長一短。

新うるしは、デメリットや体験談があまりWebで語られないので、わからない部分が多いために若干悪者にされているのではと感じています。
私は、自分の体験から、どちらも使いたいシーンを明らかにして、選んで使えればいいよねと考えています。

新うるし+真鍮粉/錫粉は、
「金継ぎの流れをまず手軽に体験したい」
「気に入った器が壊れたから、直して飾りたい」
「とりあえず新しい器買うまでの繋ぎで、直して早く使いたい」
時にぴったり。十分活躍してくれます。

本うるし+金粉/銀粉は、
「欠けたカップを直して現役で使い続けたい」
「思い出の品で長く身につけたいから丈夫な素材にしたい」
「子供やペットがいて安全性に気をつけたい」
時に向いているでしょう。

どんな環境でも長く使うのでしたら
私としては、本漆+金粉を使った金継ぎを、おすすめします。

天然石の専門店の方とたまたまこのことを話した時も、やっぱり金はサビないし安定してますよねとうなづき合いました。

技術がいり素材が高かったり、乾く時間も取るため
修繕費は少し張りますが、それだけの理由はあると感じています。

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